プロの梨農家が、独立をサポートする産地。
石川県加賀市の奥谷エリアに、脱サラ若手就農者が集まる秘密とは?

奥谷梨生産組合 園主
田中 忍 tanaka shinobu

石川県加賀市の梨産地である奥谷(おくのや)町では今、若い移住者が相次いで就農するという現象が起こっています。奥谷町では毎年800t程の梨が出荷され、その売上は約2億3千万円近くに達しています。梨畑を管理しているのは27名の園主。近年、その園主のもとで修業する移住者が増えつつあります。

農業分野では担い手不足の深刻化が指摘されていますが、なぜ奥谷町には若手農家が集まるのでしょうか。その秘密を、脱サラ就農者として梨栽培に15年間携わり、同組合の組合長を平成30年度末まで務めていた田中忍さんにお話を伺いました。
(2019年6月インタビュー)

 

なぜ奥谷町は就農しやすいのか

私は2004年から梨園の仕事に携わってきました。もともとは東京の電機メーカーでデスクワークをしていましたが、四季を感じられない働き方に疑問を感じ、脱サラして梨農家になりました。奥谷町で就農したのは、実家が農家だったということもありますが、決定的な理由は、この町に新規就農者を受け入れる風土があり、広大な梨畑と選果場などの設備が維持されてきた歴史にあります。

なぜ奥谷町に新規就農者が集まるのかというと「初期投資が少なくて済むこと」「販路がすでにあること」「先輩農家のもとで修業できること」「農地を分譲してもらいやすいこと」など複数の理由があります。ノウハウや資金力がなくても、失敗のリスクは極めて低く、独立を目指せる環境が整っているのです。

販売ルートは関西圏や石川県内などを中心に確立されています。また設備投資についても、防除機械(虫害や病気を防ぐときに使う機具)や、選果場(出荷を行うための設備)を借りられるため、高額な設備を揃える必要もありません。農地取得については、修業を積めば、のれん分け方式で、すでに木が植えられた梨畑を得られます。それゆえ奥谷町では脱サラ新規就農者が栽培技術の習得に集中できます。

果汁を吸う害虫から梨を守る「防蛾灯」。
7月~9月の収穫時期に灯される。

 

限られた農地で
たくさんの梨を育てる方法

梨園主は、1人当たり1町歩(1ha)以上の農地を所有しています。1町歩あたりで年商800万円分を収穫する農家もいれば、1000万円に達する農家もいます。失敗すれば600万円ぐらいに落ち込みます。

年収を増やすには、梨畑を埋め尽くすほど綺麗に実らせることを念頭に作業しなくてはいけません。ところどころ実らない梨棚があれば、年収は減ります。枝をどのように伸ばすか、どの時期までに、どの作業を終わらせておくか、たくさん実らせるには「計画性」が大事です。

とはいえ、いきなり1町歩の農地で綺麗に実らせるのは難しいので、まずは園主のもとで2年ほど修業するのが王道です。梨園で生活費を稼ぎながら、栽培の腕を磨いてもらいます。独立できれば年収も増えるため、私たちも応援しますが、焦っては失敗します。実らせる自信が持てるまで経験を重ねて下さい。

 

梨の味を高めるIOT活用術

収穫量を増やすことも大事ですが、品質を高めることも重要です。たとえば梨の甘さは、農家によってハッキリと異なってきます。なぜそんなことが分かるのかと言うと、梨の甘みを数値化しているためです。選果場で梨を光センサーに通すと、糖度が一目瞭然となります。

これから始めようとしているのが、糖度の高い農家が「どの時期に、どんな作業をしているのか」を調べ、そのノウハウを生産者同士で共有することです。より美味しい梨を育てる技術をみんなに伝えることで、産地一丸となってより高い品質を目指していきます。

IOTを農業に導入するには、多額の資金が必要となるため、脱サラして個人で設備投資するのは難しいでしょう。新しいテクノロジーも活用しながら、より美味しい梨づくりを志す方を募集しています。

梨は大きさごとに分けられ、出荷される。
収穫量の6~7割は関西圏に輸送される。

 

田中さんと会う農園見学ツアー

奥谷町の梨畑や選果場などの設備をご覧いただきながら、園主の田中さんに就農相談できる移住ツアーです。

栽培品種や就農先でお悩みの方、農家民宿・農家レストラン・六次産業化への着手を視野に入れている方もご参加いただけます。

詳細

事業所 奥谷梨生産組合
所在地 石川県加賀市奥谷町拓43
業務内容 梨の栽培や収穫など
目標 梨栽培の技術を習得し、農家としての独立を目指します。
生産者数 27名
免許資格 普通自動車運転免許

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