歴史の面影が漂う
伝統建築や古民家

が身近な暮らし

伝統建築や古民家の価値の1つに、歴史的景観を継承する役割が挙げられます。漆塗りの柱、袖壁、土壁、赤瓦、囲炉裏、煙出し、石垣などの伝統の漂う建築物を残す取り組みが、石川県加賀市では展開されています。

石川県加賀市において、伝統建築や古民家が集積しているエリアとして主に3つ挙げられます。
・城下町の町割が残る「大聖寺地区」
・北前船の船主たちが豪邸を築いた「橋立地区」
・炭焼き集落として栄えた「東谷地区」

これらの地域は同じ市内にありながら、全く異なる文化圏を形成しています。その特徴が分かりやすい形で表れているのが景観です。地理気候や植生の違いが、歴史文化にどのような影響を与えたのかを、景観から読み解くこともできます。そのため教育や観光などと結び付けた伝統建築の活用にも期待が寄せられます。さらに経済活動と結びつけることで、自律的に持続させる仕組みを作ることもできます。

この記事では、先に挙げた「大聖寺」「橋立」「東谷」といったエリアを紹介したうえで、伝統建築や古民家の探し方をお伝えします。

 

碁盤の目状に区画された町並みが残る大聖寺

大聖寺地区は、「九谷焼」や「鴨の食文化」「絹織物」などを育んだ城下町です。江戸時代の町割として碁盤の目状に区画された町並みが、現代にまで受け継がれており、伝統的な建築様式を有する「町屋」が現存しています。町屋からは職住一体となった商人の暮らしが伺えます。そこは商人が生活を営む場でありながら、表通りに面した空間は店として使われ、人々に開かれた商業環境として機能していました。

もともと町屋は隣同士が軒を接して建ち並んでいたため、火事による延焼防止や隣家同士のプライバシー保護、雨風を防ぐために様々な工夫が施されています。その具体的な特徴として「袖壁」「さがり」「出格子」「しとみ戸」「庇」「せがい構造」を挙げられます。

こうした町屋に加え、大聖寺には大正時代の料亭建築を伝える「鴻玉荘」や、江戸時代の北前船船主が建てた屋敷を移築復元した「蘇梁館」が誰もが自由に出入りできる場として開かれています。

 

 

海の商人が築いた橋立の伝統建築

江戸時代後期から大正時代にかけて、栄華を極めた北前船の船主たちが暮らした町が橋立です。北前船とは大阪と北海道の間を往来し、各港で売り買いを繰り返した帆船を指します。こうした商船の船主・船頭たちの邸宅が橋立地区には残されています。

もともと橋立は半農半漁の集落だったと考えられ、現存する船主屋敷では和室が田の字型に配されていること等から、農家型の住宅様式をもとに発展した経緯が伺えます。赤瓦の葺かれた、切妻造妻入りの二階建てが威風堂々と構えています。

赤瓦の豪邸に象徴される町並みは海岸に面しているとはいえ、谷間の傾斜地に海から隠れるように展開しています。日本海の潮風から家を守るために「石垣」「板塀」「防風林」が施されています。建物同士が密接に隣り合う大聖寺地区の町屋とは、対照的な景観が形成されています。

 

山奥で御用炭を生産した東谷地区

東谷地区で見られるでは主屋は農家型の形式を取り、切妻造・妻入・四面庇付の構造を基本とし、屋根には「赤瓦」「煙出し」が設けられています。内装は「漆塗りの柱」「囲炉裏」「黒く煤けた壁」などの特徴を有します。

急峻な山々や谷筋などの地形を活かした「製炭」や「焼畑」が営まれていました。藩政期の宝永元年(1704)には、荒谷・今立・大土・杉水などの村で大聖寺藩の御用炭を生産していたことが知られています。これらの林業に加え、平坦地には田畑が僅かにあり、それを補うように周囲の山並みの斜面や谷筋には焼畑も広がっていました。

こうした暮らしは山々によって支えられ、急峻な地形に沿って家屋が建っています。敷地の境界は簡単な石積みや水路などでつくられているだけで、塀や生け垣などの領域を示す装置はありません。

橋立地区の船主屋敷が、板塀・石垣で敷地を明確に区切り、大邸宅が点在しているのに対し、東谷地区では似た規模の家屋が集まり、なおかつ一見すると境界がぼやけているため、かえって家々が混然と一体化した空間を形成しています。

 

 

伝統建築や古民家の探し方

空き家・店舗を探すときは、不動産会社や空き家バンクを活用できます。しかし、希望する物件が見つからない時は、どうすればよいでしょうか。

町の区長さんや地域住民に聞いてみることで、物件が見つかることもあります。また遠方から何度も行き来しながら理想の物件を探すのは限界があるため、一度は賃貸住宅に住み、1~2年かけて物件を探す方法もあります。そのためにも居住エリアを絞り込んだうえで、不動産会社から地域住民までアンテナを張り巡らしておくことで、伝統建築や古民家が見つかるかもしれません。

 

生の情報を得る移住体験

伝統建築や古民家を実際に活用している人の声を聞いてみることで、まずは初めの一歩を踏み出しませんか。石川県加賀市にも、伝統建築や古民家を活用してカフェやBAR、レストランを開業した先行事例があります。またイベントなどで活用する団体も存在します。

どのようなポイントを踏まえて建物を探すか、冬の対策をどうするか、など現実的な計画を立てるにあたり、現地にお越しになる際には「お試し住宅」もご利用いただけます。最大6泊7日まで無料で滞在できます。

伝統建築や古民家の活用事例をお知りになりたい場合は、移住コーディネーターにご相談ください。

お試し住宅