特集 地方インターンシップ Vol.2
交流はわたしたちの欲求
関係人口が
それらを満たし合う

吉本社長と金木さんが座っている

 

新型コロナウイルスによって多方面の方々が影響を受け、アフターコロナ時代を模索しています。加賀温泉郷を有する温泉観光地の石川県加賀市でも、その影響を大きく受けました。

このコロナ渦において、山中温泉の『お花見久兵衛』が大学生をインターン生として受け入れました。インターン生は約10日間の就業体験と、卒業論文に向けてヒアリングを実施するなかで、よそ者の視点で魅力や課題を発見しました。

移動の制限によって交流・活動を制限された首都圏大学生と、他方では営業停止を余儀なくされた地方の温泉旅館がインターンシップを振り返りました。アフターコロナ時代における交流の価値、旅館の役割、そして関係人口の在り方についてご紹介します。

(2020年9月29日 座談会&インタビュー)

 

インターン生受け入れ企業

(インターンシップ実施期間 2020年10月18日~29日)

吉本さんの笑顔

有限会社吉花/代表取締役 吉本龍平

実家の旅館の跡を継ぐため、23歳で石川県加賀市へUターン。個人客中心のビジネスモデルへ転換。「次世代の旅館文化の創造」を使命に、新たな改革に挑戦している。

Vol.1 外国人移住者が多い温泉旅館

インターン生 

金木さんの笑っている写真

東洋大学4年生 金木葉奈

「地方における外国人移住者」をテーマに卒業論文を執筆するためインターン生に。フロント・キッチン業務などの職業体験と、4名の外国人移住者と幹部、経営者へのヒアリングを基に課題提起を行った。

Vol.3 金木さんのインターンシップ回想録

 

お花見久兵衛の外観写真

旅館内のフロントの様子

 

 

「交流する」が難しくなった世界。

〈迫  / 地域おこし協力隊〉

これからインターンシップ終えての振り返りとして、座談会形式のインタビューをさせていただきます。よろしくお願いいたします。

最初に吉本社長にお聞きしたいのですが、どうしてコロナ渦でインターン生を受け入れたのですか?

迫 真琴氏
迫(インタビュアー)

 

吉本さんの笑顔
吉本社長(インターンシップ受入企業)

〈吉本社長〉
シンプルな答えは、交流に飢えていた(笑)。やっと来たなって。
国内外問わず毎年インターン生を受け入れていたところ、2020年は全くできなくて、うずうずモヤモヤしていた中、地域おこし協力隊の迫さんからオファーをいただきました。

 

〈迫〉
まさに即答でした。
その点は金木さんも驚いていましたね。

 

金木さんの笑っている写真
金木さん(インターン生)

〈金木 / インターン生
そうなんです。迫さんからインターンシップ参加を提案された時は、正直すこし不安でした。

地域や旅館の方から、迷惑と思われるのではないか、不安にさせるのではないかって。

 

〈吉本社長〉
首都圏の方ほど、移動しづらいもんね。特にコロナ渦では紹介する側や、飛び込む側が不安になっていると思います。僕らみたいな宿泊業としては、土地によって来て欲しい、来てほしくないを言うのは、サービス業失格と思っていました。なので、あまり心配はなかったです。

 

〈迫〉
移動が制限されて、交流が簡単ではなくなった。一方では首都圏の大学生が移動に不安を持ち、他方、地方の旅館は受け入れを拒まない姿勢が絶妙なコントラストですね。

 

 

 

コロナ渦で感じた「交流イコール悪」

〈迫〉
金木さん、お花見久兵衛や吉本社長の第一印象をお教え下さい。

 

〈吉本社長〉
正直にお願いします。

 

〈金木〉
ほんとうに寛大、寛容だなって感じました。地域や旅館から迷惑と思われているのではないか、「私自身イコール悪」と思われていないかって。それなのにオンラインで吉本社長と顔合わせした時「全然気にしてないんだ!」って感じて、本当に嬉しかったです。

 

〈迫〉
たしかに移動や交流イコール悪、の風潮はありますね。

 

〈吉本社長〉
その点は私たちも葛藤がありました。コロナの影響が一番強まった春頃、「交流イコール悪」となっていたと思います。人と人が交流してサービスを生産することを生業としている我々からすると、「私たちの生業イコール悪なのか」と自問自答をしていました。

 

吉本社長、迫、金木さんが映っている
オンラインでの打ち合わせ&顔合わせの様子

 

 

 

交流は、絶対無くならない。

〈迫〉
交流について自問自答して、どんな答えがでましたか?

 

〈吉本社長〉
交流は無くならない、そう感じました。オンラインでの交流がかなり活発になり、また宿泊業においてはオンライン宿泊までも出てきました。それをみていて、形を変えてでもみんな交流を求めているんだなって。それを踏まえると交流イコール悪ではない、との答えになりました。

 

〈迫〉
なるほど。交流は無くならない。

 

〈吉本社長〉
絶対無くならない。

 

吉本社長ソロ写真
「交流は、無くならない。」と語る吉本社長

 

〈迫〉
金木さんはこの点どのように感じますか?

 

〈金木〉
これまで交流に対して特別考えることがなかったです。交流を遮る障壁が無く、あたりまえのものと感じていました。

移動制限がされてから「交流したい!」って、心から思うようになりました。実際に加賀市に来てからは、交流するたびに「もっと交流したい!」と湧き出ていました。

 

〈迫〉
「交流したい!」とは欲求のようなものですね。今後、交流の価値が高まるのではないか。

 

〈吉本社長〉
おっしゃる通りで、サービス業のあり方が明確になりましたね。これから機械化や自動化が進む中で、人間の価値が高まっていく。あたりまえだった交流が遮断されたことで交流の価値を見直し、その価値が高まる契機となったのがコロナで得られたものだと思います。

 

 

 

交流を生み、関係人口を作り、地域貢献につなげる

〈迫〉
交流が再評価される時代において、旅館の価値とはなんでしょう?

 

〈金木〉
まさに交流を生み出すことです。交流人口から関係人口へ、そして地域貢献に繋ぐことだと思います。正直に申し上げると、インターンシップに参加するまで旅館とホテルの違いが分かりませんでしたが、地域と人を繋ぐのが旅館の魅力と気づいたんです。

 

〈迫〉
地域と人を繋ぐ役割、それが旅館の価値。

 

〈金木〉
そうです。そういった意味で、旅館はもっと交流をピックアップして、踏み切っていいのかなって思いました。私自身、今後交流を楽しみたい時には旅館を利用したいと思っています。

 

〈吉本社長〉
非常にありがたい意見です。私たちの描く旅館像にも通じるので自信になりました。社内にも、地域にも、もっともっと交流を創出していきたいです。

 

金木さんがマスクしている様子
「旅館の価値は交流を生み、地域貢献すること。」と述べる金木さん

 

〈迫〉
吉本社長は戦略的に外国人移住者を受け入れています。実際に外国人移住者とお客様の間では、どんな交流がありますか。

 

〈吉本社長〉
うちの外国人スタッフは本当に優秀で、お客様からは喜びの声ばかりです。日本語が上手だったとか、応援しているよとか。お客様から直接褒められることは、彼ら(外国人移住者)自身にとって何よりのエネルギーとなっている気がします。

 

〈迫〉
そうですか。逆に批判などはないですか。

 

〈吉本社長〉
無いってことはないです。よくかんがえたらね、確かにうちに宿泊されて一度も日本人スタッフに会わない可能性もあるんですよ(笑)。

でもそれを嫌と思うお客様がいても、私たちは色んな人と新しい旅館を創りたいわけですから、方針はぶらしません。お客様も外国人スタッフも宿も、誰も悪くない。たまたま価値観が合わなかっただけ、ですね。

 

〈迫〉
なるほど。交流の形は千差万別で、合う合わないは当然出てきますね。

 

 

〈迫〉
これまで交流は、交流人口を増やすとか、関係人口を増やすといった文脈において、手段のように捉われたと思います。今回のお二人の話を聴いて「交流自体が欲求」であり、それを満たす目的にもなっていることを再認識しました。

この欲求を満たし合う関係構築することが、加賀市のファンを増やす糸口と思います。

 

〈吉本社長〉
そういった意味では金木さんと良い関係を築けたので、関係人口を創出したことになりますね。どんな形でもいいので、これからも加賀市に関わってくれたらと思います。もちろん、私たちもいつでもお待ちしております。

今回はこのような状況下の中、インターンシップにご参加いただきありがとうございました。

 

〈金木〉
また加賀市へ来ます。その際は、またよろしくお願いいたします。

 

吉本社長と金木さんが笑っている
「また来てね」と、念を押したあとの笑顔

『お花見久兵衛』紹介ページ

 

今回のインターンシップについて

今回のインターンシップは(株)ぶなの森/地域おこし協力隊の迫がコーディネートしており、加賀市定住促進協議会としてインターン生の募集はおこなっておりません。

インターンシップ実施前にインターン生に地域入りをしていただき、2週間の外出自粛期間を設けました。その間は毎日の体温測定と体調チェック、不要不急の外出を控えるなどの対策を取りました。

(株)ぶなの森/地域おこし協力隊 迫 真琴