企画デザイン力×地域おこしのインパクト
地場産品を活かす「食」の事業で、地域になりわいを作る。

代表取締役 中巳出 理さん
幼少時より伝統生け花を修得し造形活動に携わり、その後現代彫刻アーティストとして活躍。2009年に地域農産物や伝統技術で作られた原料を利用した商品開発を行い地域活性化に繋げたいとAnteを創業。500年以上の歴史を誇る奥能登・珠洲の「揚げ浜塩」を使ったサイダーやゼリー、白山市の伝統野菜「剣崎なんば」のチョコレートなど数々のヒット商品を生み出す。2014年8月に珠洲市の海沿いに「しお・CAFE」オープン、平成29年4月には揚げ浜塩田を開耕し製塩事業を開始。
(インタビュー/2017年6月28日)

 

被災地復興支援で誕生した地サイダー「柚子乙女」

会社の創業は2009年5月。実はその前年の7月に金沢を襲った集中豪雨で浅野川が氾濫し、金沢の奥座敷・湯涌温泉に大きな被害が出ていました。復興を応援したいと、湯涌地域の特産品でありながら当時あまり知られていなかった柚子に着目し、地サイダーの商品開発を企画。その製造から販売までを自ら行おうと奮起し、法人を立ち上げたのが創業のいきさつです。

事業化の動きはともかくスピーディ。夏の暑さが本格化する7月上旬には「金沢湯涌サイダー 柚子乙女(※当時は「柚子小町」)」の新発売にこぎつけただけでなく、金沢湯涌夢二館を擁する湯涌温泉の地域イメージと絡め、大正ロマンの着物女性によるプロモーションビデオも制作して発信。JR駅等でのキャンペーンなどの多彩な展開がマスコミにも取り上げられ、初回生産ロットを約40日で見事完売させました。

 

 

第二弾は、奥能登珠洲の揚げ浜塩を使った「しおサイダー」

当時の石川県は、2007年発災の能登半島地震からの復興というテーマも抱えていました。被害の大きかった奥能登には、500年近い伝統を日本で唯一受け継いできた揚げ浜塩田の塩づくりがあります。しかし当時は能登の塩はほぼ無名の存在。この歴史ある塩の存在も何とか世に発信したいという思いから、地サイダーの第二弾として「しおサイダー」に着手。「柚子乙女」発売からわずか約1か月後には商品企画をスタートさせ、同年の秋にはこちらも新発売へ。

希少な揚げ浜塩田の塩の存在は、「しおサイダー」の登場によってもクローズアップされるようになりました。地サイダーは日本全国に約600~700もあると言われ、常に入れ替わりの激しい商品。そんな中、アンテの地サイダーが発売以来安定して売れ続けていることは「奇跡」と言われるほどで、地元の特産品を活かしたアンテの地サイダーは、業界でも一目置かれる存在になっています。

 

能登の塩をつかったサイダー

 

 

地場産品を活かす商品開発で、地域活性化に貢献

アンテでは、「柚子乙女」「しおサイダー」の売り上げの一部を、毎年それぞれの原料産地である地元に寄付し続けています。「柚子乙女」は被災した湯涌街道の整備に、「しおサイダー」は珠洲里山里海基金を通じ、揚げ浜式製塩法などの地域文化の継承・発展にと寄付を行っています。

このように、「地域おこしに貢献しよう」という目的が、アンテの企業理念の大きな柱です。また、「しおサイダー」で奥能登の珠洲地域に深く関わるようになったことから、その素晴らしい景観の継承と再生にも寄与しようと、半島先端の過疎地域で「しお・CAFE」をオープンするなど、地域活性化の視点に立脚した事業はさらに広がっています。

 

左から梅紫蘇しお、醤油しお、燻製しお、焼きしお、ミラクルソルト

 

 

反骨精神と伝統への敬意でチャレンジ

現代アートの世界からビジネスへと身を転じた中巳出社長は、自身の人生をチャレンジ&ネバーギブアップで怒涛の年月を走り抜けてきた「かさぶた人生」と評します。転んでは立ち上がり続けてきた経験知が大きな糧になっています。

地域貢献への熱い思いと、地域の文化・伝統への深い敬意が結びつき、「地域に生業を作ること」を強く意識するようになりました。伝統が引き継がれるためには、常に新しい要素を加え、進化させなければというのも信条の一つです。かつては一流料亭にしか使わせないと言われた揚げ浜塩田の希少な塩をサイダーに使う「しおサイダー」も、こうした地域文化への敬意から生まれました。

さらに、深刻な高齢化問題を抱える揚げ浜式製塩の現状を憂い、自らも伝統を次代に引き継ぐ一員となるべく、塩田そのものも自社で手掛けるという大きな決断をし、製塩事業にも乗り出しています。

 

 

商品開発の多彩な展開とこれから

産地と結びついた地場産品活用型の商品開発は、地サイダーのみにとどまらず、白山市の伝統野菜“剣崎なんば”(唐辛子)を使ったチョコレート「ちょこっとなんば」や、小松市のトマトを使った調味料「しおトマト」なども生み出しています。産地の生産者にきめ細かなリクエストもできる緊密な関係を築き、品質のレベルアップを図っています。「しおトマト」は、雑誌「婦人画報」のお取り寄せサイトや本誌別冊付録カタログに掲載(2017年夏現在)されました。

製塩事業のスタートによって、材料の揚げ浜塩を自前調達できるメーカーとなった今、これまで以上にじっくり腰を落ち着けて商品開発できるという利点も得、ポケットサイズでおしゃれな小袋パッケージの塩など、手に取りやすい商品の提供も可能になりました。

健康への提案やエコサイクルの実現に向け、研究機関の協力も得ながらの活動も進行中です。

 

 

 

人材募集中。一緒にスクラムを組んで進む仲間を求めています

商品が様々な賞を受賞するなど高い評価と注目を集める一方、会社としても中小企業庁の平成28(2016)年「はばたく中小企業・小規模事業者300社」への選出や、同庁の「ふるさとプロデューサー育成支援事業」で受け入れた研修生が、熊本へ帰郷後に手掛けた事業で同庁から優秀賞を受賞するなど、多彩な地方創生事業の実績を上げています。

これからも、地域おこしが絶対条件。アンテの社名は、ずっと長く続くものをという願いを込めた“アンティーク”や、常に情報をキャッチして発信していく“アンテナ”などから命名されています。

みんなと一緒になって、地域の明日をつくっていこう。そんな仲間を歓迎します。明るく前向きに、スクラムを組んで進んでいける人材を募集中です。

 

<事業所データ>
株式会社 Ante(株式会社アンテ)
代表者:代表取締役 中巳出 理
所在地:〒922-0441 石川県加賀市篠原新町1-162
連絡先:TEL.0761-74-8002
設 立:平成21(2009)年 5月
事業内容:
・商品開発事業(地域農産物や伝統的技法による原料を活用した食品等の商品開発、製造販売)
・観光、地域活性化事業
・プランニング事業
・デザイン企画
・映像コンテンツ事業
URL :http://ante-jp.com/