自動車・バイクの高精度部品で国内外に高いシェアを獲得
命を預かるパーツづくり

総務部兼原価管理室 部長 古本 隆嗣さん
自動車やオートバイの特殊精密部品をつくる会社です。ひとつひとつの製品は小さくても、人と社会になくてはならない物。果敢な挑戦による高精度の製品は国内外で評価されています。
10年後に世界をリードできる製品分野と必要技術を模索している仲間と共に、目標を持って主体的に行動できる方を求めています。
(インタビュー/2016年7月27日)

 

売上の75%が自動車部品

弊社の現在の売上構成は、自動車部品のウエートが75%と大きく占めています。20%がオートバイ部品で、その他が5%。自転車車輪のスポークで創業した会社ですが、自転車産業からはすでに撤退しています。

 

大型車バイクのスポークを製造

オートバイのスポーク製造では、国内の4大オートバイメーカー、ホンダ、カワサキ、スズキ、ヤマハ、すべてに供給、国内シェアは80%です。オートバイ部品は、国内のオートバイメーカーに直接お納めする流れです。

中でも大型車バイクが多く、海外のハーレーダビッドソン社についてはシェア100%です。

世界的にはオートバイは小型志向で、125cc以下のバイクの生産が特に東南アジアなどに増えています。その東南アジアへの輸出もあります。また、タイに技術提携先のパートナーを得ており、2010年4月にはタイに進出、オートバイならびに自動車の部品の製造拠点として準備を進め、土地を得て工場を建てましたが、あくまでも軸足は日本に置いています。

 

国産自動車のほぼすべてに、月星品が搭載

自動車部品については、完成車メーカーさんのティアワンメーカー(Tier1 =メーカーに直接納入する一次サプライヤー)に納めて、ブレーキやエンジンに組み付けられ、それが完成車メーカーに搭載されていくという流れです。つまり弊社は、ティア2(ツー)、ティア3(スリー)の部品メーカーです。

月星製作所で作られた製品が搭載されていない国産自動車は、おそらくほとんどないと思います。ただ、外からは見えない場所にほぼ使われ、一般生活者さんには当社の社名は馴染みがないでしょうね。

 

重要保安部品。要求されるレベルが高い

新しい製品の引き合い検討依頼は、毎月50~60件来ます。ほとんどが重要保安部品ですから、納期や精度は非常に厳しいです。もしも欠損するようなことがあれば、ブレーキが利かないとかエンジンが止まってしまうなど、命に関わるわけです。

一例ですが、ボンネットやドアを開けた時に油圧シリンダーが支えるジョイント部分に使わるボルトがあります。そんなものがもし折れたら、ドンと落ちてきて怪我につながります。また、ワイパーの軸に使われている部品があります。大雨の日にワイパー軸が壊れて動かなかったら視界が確保されません。事故に発展する可能性があるわけです。

お客様の製品図面に従って、お客様の要求を満たす品質性能を満足させるために、どのような工程で造るかを検討しています。

 

10年後には製品の半分が置き換わる

常時毎月お客様からご注文いただいているものは、3000~4000種類。月間の生産本数が1億本です。

そうしたアイテムも、10年経つと半分は無くなっています。類似した製品に置き換わったり、形状が全く変わってしまうものもあります。使われなくなった後も保証期間があり、補用品として残ります。そうした製品も含めると、登録されている製品数は、およそ1万5千件にのぼります。

社内設備も基本的に内製しています。金型も内製し、加工機械も作っています。

 

コア技術「冷間圧造」によるニアネットシェイプでコストカット

コア技術は、鉄を変形させる際の「冷間圧造技術」です。鉄加工の技法には、温間、熱間、鋳造、削り出す切削等があります。「冷間圧造」とは、材料自体は常温のまま機械に投入し、塑性加工(外部から力を加えて変形)する技法です。

この冷間圧造でお客様の要求する完成品間近に限りなく近づけることを、ニアネットシェイプと呼んでいます。高精度の製品を造るには、本来であれば最終的に切削などで手を加えていくところを、冷間圧造の技術を用いて完成品の近似値に持っていく、あるいは冷間圧造だけでやりきる、ということです。

切削加工などの二次加工、三次加工を加えれば当然コスト高になりますし、削れば排出物が出て、やはり環境にもよくない。そういう意味で冷間圧造は、環境に優しい技法ともいえます。

 

国際承認規格

国際承認規格は、ISO/TS16949を取得しています。それを取引条件としている自動車部品メーカーさんもあります。

 

年齢構成のバランスを大事に、定期採用

300人の小さな会社なので、年齢構成のバランスが大事です。毎年計画的に新卒採用を行っています。大卒者は3~4人ですね。営業、開発、そして弊社は部品を作る設備も社内で作っており、その設計部門。主にその3部署です。設計は、機械および電気の方ですね。従業員には理系の人間が多いです。というのは、営業にやっていただく仕事もカタログ販売的なものではなく、技術を売り込むセールスエンジニアだからです。

 

理系の仕事。ただし求める人材は、文理問わない

ただ、文理は問いません。理系の学校を出た方は業界の用語を知っている分、スタート段階での有利はあると思いますが、あくまで入社からがスタートです。アイディアを出せるか。機転をきかせ、気が付けるかどうか。製造でも営業でもコミュニケーションは必要で、求める人材にあまり違いはないですね。

求める人材は、正直で主体性を持って行動できる人。一言で言えばそこに尽きます。また、どんな会社でもそうだと思いますが、目標を持って行動できる人。 社内教育は、基本的にはOJT方式です。大学卒業見込み者を対象としたインターンシップも受け入れていますが、現状では1日だけなので、他社に比べて短いです。
高校生の採用は地元の指定枠から。大きな会社ではないので、毎年3人くらいです。

 

多能工(マルチスキル)人材も育成し、ますます少数精鋭へ

従業員数は、リーマンショック前の8年前に比べ50~60名減少、売上は伸びています。コスト競争力を高めるため、常に改善活動を重ね、ますます少数精鋭(一人一人の付加価値向上)になっています。
基本的に、多能工になっていきます。製造現場では一人の人がいろんな仕事ができ、モチベーション的にはいいかもしれません。ただ多能工にすると、熟練にいたるまでには年数が掛かります。ひとつのことに集中した方がベテラン技術職の匠になって、いい面もあります。

 

やりがい

自動車は全世界で多くの人の暮らしを助けています。その車を支える部品を、実は我々が造っています。誰の眼にも触れることはありませんが、社会に貢献しています。 自分の開発した部品が、この車種の例えばブレーキに搭載されているということには、とても喜びを感じられます。製造する現場スタッフたちも、その部品が何なのかを知ることができれば、喜びが増えるのではないかと思います。

 

事業所データ
企業名:株式会社月星製作所
代表者:代表取締役社長 打本 渉
所在地:〒922-8611 石川県加賀市永井町71-1-1
連絡先:TEL. 0761-73-8282(代)/ FAX. 0761-73-8283
設 立:1947年4月16日(昭和22年)
資本金:310,500,000円
WEB:http://www.tsukiboshi.co.jp/