漆器の伝統を創造し続ける
ファミリー世帯の暮らしに寄り添うモノづくり

専務取締役 守田 貴仁さん
山中漆器の木製商品などの企画・製造・販売を行う会社です。製造は、各工程を担う地元産地の職人たちと連携したものづくりを行っており、自社オリジナル品を含めた、企画開発をしています。 製造の際の工程管理、および商品化された製品の営業販売管理を行ってくれる方を募集中です。日本の感性と知恵を世界に届ける仕事に携わってみませんか。

 

創業から100余年

創業者は祖父で、2代目「庄作」を名乗っていました。初代「庄作」は、山中の漆器資料に名が出てきて、誰に師事し、どこで仕事をした等は分かるのですが、いつから始めたのかが曖昧。そこで、祖父の生まれ年の明治42年を一応の創業年としており、以来100年余となっています。株式会社設立は昭和45年です。

 

子ども向け漆食器が、キッズデザイン賞受賞

子ども用の木製食器でキッズデザイン賞をいただいたのが、5年前の平成23年です。一般的に何かモノをつくろうとするときは、自分でアンテナを張り、そこに何かがパっと結びついてきた時にアイディアが生まれたり、品物が生まれたりがあると思います。キッズデザインの時は、まさしく自分に子どもができまして、そうして周りを見た時に、子どもに対する食器の充実がありませんでした。そこから出てきた商品です。

 

自然素材を志向する流れにマッチ

都会でも、「自然にあるマテリアルのものを使いましょうよ」っていう気風があったりします。子どもの器を手掛けたことで、特に感じるようになりました。もちろん一方では、PET樹脂で食洗機に入らないとダメって方もたくさんいらっしゃるんですが、そっちじゃなく、木、陶器、ガラスなど、自然の素材でできたものを使おうよ、という気風もあるので、そういうところは大事にしていきたいです。

 

山中のろくろ技術を活かしたウスビキライト

ウスビキライトは、そうした自然志向の流れと、産地山中ならではの高度なろくろ挽き技術が融合した製品です。実際に以前から薄挽きの技を、デモンストレーションとしては見せていました。だから、山中のろくろ技術を持つような伝統工芸士さんであれば、実は意外と皆さん挽けると思うんです。ただし、もし一点モノであればです。器として使うには、ここまで薄くする必要が無いからです。むしろ、これだけの薄さで同じものを量産することが難しい。

ウスビキライトは、内側の光が透けて見えるほど薄く木を削り出すことで、美しい木目と温かな表情をみせるランプシェードができました。

導入事例としては、金沢21世紀美術館の近くの「金澤ななほしカレー」さんの店内等に使っていただいています。外からも見えます 。

 

核家族化した若いファミリーにも、うるしを使ってほしい

「使って使いやすいもの」を、もっと提供していきたいと考えています。 今また、うるしが見直されているんですが、ただリーマンショック以前とは、全く社会が違ってきています。かつては、「結婚式の引き出物は、やっぱり漆器やろ」と言ってくださる方が多かったし、ご家族のかたちは核家族じゃなく3世代や4世代同居の方も多くて、昔から使ってきた物の使い方の継承もスムーズでした。今は、ご自分がいいと思うものを使って生活します。スタイルが変わったんです。そんな中でも、箱膳のブームを一例に、あくまで漆器の世界の中での小さいブームだとしても、注目される漆器が確かにあります。

ですから、古い文化も大事にしてもらいつつ、新しい生活体系に合うものも作っていくという考え方です。新しい提案に挑戦していこうと、金属加工で有名な新潟の三条と、ここ山中の漆器とで伝統産業同士がコラボレーションした器などもつくっています。

 

新商品開発は、社内の企画会議から

新商品開発については、いまは女性ばかり4人のチームと企画会議をしながら進めています。従業員数が20人弱のうち、約7割が女性です。

いろんな使いやすいもの、変わったもの、面白いものを作っていきたいと思っています。 商品の販路は、金沢、輪島などの県外も含め、各地にいっています。山中はOEMが多く、日本全国津々浦々、どこにいっても山中の商品は絶対にあります。うちでもOEMもやっていて、以前はその比率が非常に高かったのですが、今はだいぶ減りました。山中全体でも、オリジナルをやっていこうという流れは多いんじゃないでしょうか。

 

職人の育成は10年単位。育成の取り組みを始動

会社としては、企画と販売が基本です。創業こそ上塗りの「塗師屋」さんから始まりましたが、いったん塗師のほうは止めて、企画のほうをやっていました。しかし、やはり今後は人材を育てなければならないと考え、今年から塗る工程も社内で再開しています。 その他に、正社員、パートさん1人ずつ求人していて募集中です。職種は、製造工程に携わる仕事と、社内での製品管理。職人さんも足りていません。

今年、新卒で塗師屋さんの女性が2名入社しました。指導は地元の伝統工芸士さんにお願いし、しばらくは通いで預けます。そこで仕事を少しさせてもらうことにより、技術を習得していきます。塗りをそれなりに仕上げられるようになるには、5年はかかります。しっかり仕事を任せられる人を今から育てようというと、やはり10年見ておかないと怖いです。一度に2人採用ですから、うちとしては大冒険ですよ。

組合も、人材育成の助成制度を来年度には立ち上げようと準備にかかっています。人材育成は、産地・山中がこれからも継続していくための避けられない課題です。

事業所データ
企業名:守田漆器株式会社
代表者:代表取締役社長 守田 進
所在地:〒922-0106 石川県加賀市山中温泉上原町ワ-528
連絡先:TEL 0761-78-0106 / FAX 0761-78-5311
WEB:http://urusi.jp