世界一周し、住処に選んだのは加賀
「ここ面白いよ」と高校生に伝えたい

飯貝夫妻とお子様の写真

移住者インタビュー
飯貝 誠さん、真美子さん夫妻(Uターン)/タビト學舎(学習塾主宰)

IT系企業を脱サラし、足掛け2年間の世界一周新婚旅行の後、加賀にUターン移住して学習塾を開設。塾では高校生向けに、面白い生き方をする様々な大人の姿を示すユニークな取り組みも行う。プライベートでは加賀でのアウトドアライフも満喫中。

(2016年10月インタビュー)

 

 

新婚旅行は世界35か国、575日間の旅

夫婦二人とも、加賀出身のUターン組です。僕は地元の高校を卒業後に神戸に出て、29歳で帰ってきました。妻は大学進学時に東京に出て金沢で就職、転職で大阪にも住み、結婚でUターンです。

結婚する時に、2人で世界に旅に出ました。バックパッカー旅行で計35か国、日数トータルで575日。東アジアに東南アジア、中東からヨーロッパへ渡り、モロッコの後に南米へ。ブラジルの農場では、日系人があんなに日本の文化を大事にして暮らしていることに驚き、約4ヶ月滞在しました。地球の裏側で味噌作りを習ったりして、一番印象に残った国ですね。チベットやアルゼンチンの南のパタゴニアの絶景も素晴らしかった。

 

 

 

出会いが広がり、地元のあたたかさに気付く

実は、帰国後は移住先を探しに、飛騨、長野、福井などに行っていました。仕事もまだない。

前職はIT系、国や大手法人向けのシステムづくりでした。六本木ヒルズ、池袋、皇居の前など、東京をプロジェクト単位で転々とし、「20代で、東京はもう充分かな」と思い、次はシステム開発のような大人数の一員として働くより、美味しい食べ物を提供して美味しいと言ってもらえるような小規模でダイレクトに顧客と接することのできる仕事を、どこかの地方でできたらっと考えていました

そんな中、まちづくり学校「かがやき塾」をのぞきに行ったことが転機になりました。「こんなに面白い人たちがいたんだ」と、加賀が楽しくなっていき、生まれ育った大聖寺地区以外のことも知るようになりました。その頃から徐々に昔の同級生たちとも会うようになり、「地元って、あったかいな」と思う機会も増えました。その頃に子どもができまして、子育てを考えると加賀はいい。親孝行的にも近いと喜んでくれ、後押しになりました。

でも加賀に定住を決めた最大の理由は、「加賀は今から面白くなりつつあるまちだな」、「これから何かやっていくには面白そう」と思ったからです。「かがやき塾」には、今も運営側として関わり続けています。

 

 

朝はアウトドアライフを楽しむ

実は、一時帰国中、加賀市山代温泉地区の学習塾SIPSの久保田先生に、「塾の生徒たちに世界旅行の話をしてよ」と声をかけていただきました。その久保田さんの生活スタイルが本当に面白くて、「いいなぁ」と思ったことも大きく影響しました。

僕はスノーボードと釣りが好きなんですが、塾の仕事は午後に準備をして夕方スタートなので、朝は釣りに行ったり山に行ったりできるんです。久保田さんはカヤックでの釣りにしょっちゅう連れて行ってくれ、「魚がめっちゃ釣れる加賀市の生活は、楽しいなぁ」と実感しました。そんなライフスタイルで飄々ひょうひょうと暮らす久保田先生を見て憧れるうち、「加賀市は山も海もどっちも近くて、ここには全部あるじゃないか」と気付きました。

 

タビト學舎の外観全体

タビト學舎の教室

 

 

学習塾にリノベーション、町屋再生の助成金も適用

久保田先生のもとで1年間手伝わせてもらい、まだ時期尚早ながら、地域活動の拠点を自分で持ってみたいという思いもあり、新しい学習塾の立ち上げに着手しました。

元病院だった建物を市の建築課に紹介いただき、大教室用の間取りをとれるか不安でしたが、相談すると、市職員の皆さんも「町屋再生の事業を適用できるよう頑張るから」と言ってくれ、4月新学期のオープンに間に合うようバックアップもしてくれ、改装に踏み切りました。

設計は、加賀市の隣の小松市にUターンした若い女性建築士さんにお願いしました。棚は大聖寺地区の家具屋ニュートラルさんにリメイクしてもらっています。二階の自習室の壁や、教室の白と青のツートンは、自分たちみんなで塗りました。空間にお金や手間を掛けた理由は、大人にも入ってきてほしいから。生徒たちには勉強を教えるだけでなく、「こういう大人になりたい」と思えるような大人を見せたいんです。だから、大人と高校生で空間をシェアしたかった。

こうして、学習塾「タビト學舎」は平成28年の4月にオープンしました。

 

タビト學舎の玄関先にある旗

内観の飾り、地球儀

 

 

授業以外に、
高校生向けワークショップやゲストトークを開催

基本的にはもちろん集団授業の普通の塾なんですが、高校生が社会と接する機会を提供したくて、ゲストトークを1か月に1~2回程度で開催しています。いろんな業種で働く人が登壇します。銀行マン、アパレル、ブライダル、リケ女(工業系R&B部門)、IT系などの人に、自分の仕事を話してもらいました。

ワークショップも行っています。初回のテーマは「将来の仕事を考える」。みんなで20年後の世界を想像し、どんな仕事が残っているか、生まれているかを考えました。その後も、高校生には難しいかな?と思ったテーマ回も、結構みんな喜んでいました。みんなと話すと気付きがあるよねと、ディスカッションを大事にしています。

そんな催しを、料金はとらずに、学習塾「タビト學舎」のサービスとしてやっています。

ゲストトークをしている際の様子

 

 

「君たちの地元って、こんなに面白いんだよ」
と知って欲しい

高校生たちには、「地元ってこんなに面白いんだな」と感じて欲しいんですよね。ダイレクトに「帰ってこいよ」とメッセージするのではなく、「うちの地元って、面白い大人がいっぱいいたなあ」と思ってほしい。高校生ぐらいで自分の人生の憧れになるような大人に会っておくと、その後の成長率が大幅にアップするんじゃないかな。市内では今、大学生が加賀市の未来を考えるワークショップ『PLUS KAGA』も進行中で、少し上の世代の先輩たちの姿を見る機会にもなっています。でも、高校生って忙しいんですよ。こっちが勝手にどんどん球を投げて、誰かに当たればいいなと思っています。

大人世代が「自分のまち、好きだよ」って楽しくやっているのを見て、子ども世代に伝わればいい。そうなれば、地元の人たちも誇りや愛着が持てるようになると思います。

そんな場としていろいろ活用していたら、2017年には地方創生会議の初代アワードをいただきました。

 

大聖寺は、鐘の音が聞こえるコンパクトなまち

この大聖寺エリアは、実際に住んでみて、いい意味で静かな所ですね。時鐘堂の鐘の音が聞こえるのも特徴かな。小さな子どもがいるから車も使いますが、徒歩でも暮らせると思います。

よくいく店は、大通り沿いの中華店。半分は居酒屋のような、中華屋なのにおでんも出てくるという混沌とした感じがむしろ心地いい店です。

ほかにも、おばあちゃん世代が吸い込まれていくパン屋さんとか、コロッケがおなじみの肉屋さん、風情のある純喫茶なんかも、素敵だからぜひ行ってほしい店です。先代から引き継いだ娘さんがサイホン式で淹れるおいしいコーヒーを味わいに、大聖寺の人がどこからともなく現れて、静かな時間を過ごしています。大聖寺は、コンパクトで暮らしやすいエリアだと思います。

 

◇ブログ「加賀ぐらしのススメ。」 > イイガイさんの場合  http://kagagurashi.com/post-3/

ブログ「加賀ぐらしのススメ。」でも、飯貝さんの移住ライフをご紹介しています。
併せてご覧ください。

 

タビト學舎
高校生向けの学習塾。2016年春開設。授業の合間に、ワークショップやトークゲストも開催し、高校生に大人や仕事と接する機会を提供するユニークな塾として進化中。
石川県加賀市大聖寺荒町43
TEL 0761-76-5070

タビト學舎HP

 

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