年跨いで香る新米の風味
そこはかとない美味しさを求めて
代表 吉田 義弘
2006年1月に設立。加賀市最大の農地面積を誇り、年間300トンものお米を収穫しています。農作業員はたったの6名にもかかわらず、残業は殆どありません。効率的な農業を心がけながらも、新米の風味を翌夏まで保つひと手間にこだわり、お値打ち以上の品質を実現する稲作企業です。
いにしえの米どころで
柴山潟と海風に育まれた稲
旧石器時代の宮地向山遺跡を越えた先、梨園と田園が隣り合う所に、「吉田農産」は仕事場を構えています。遡ること弥生時代、加賀平野は、古来このかた稲作によって、数々の豪族、僧侶、武将を支えてきました。
かつて、この地は「江沼」と呼ばれ、湿地という地の利を活かした暮らしが営まれていました。今でも、山の湧き水が「柴山潟」という海跡湖に流れ込み、その水を田んぼに引いて、稲を育ています。
また日本海から吹く風が、米作りには欠かせません。稲は暑さに弱く、猛暑35℃を越えると萎れる恐れもあります。幸い、加賀平野には海風が吹き込むため、夏の暑さも31℃前後に和らげられるのです。
海風と湿地という米作りの条件が揃う加賀市において、最大の農地面積を有するのが「吉田農産」です。現在、農作業員を募集しています。
翌夏まで、新米の風味香る。
吉田農産では「コシヒカリ」「どんとこい」などの水稲品種を育てています。その特徴は、すべての品種において農薬を30~50%抑えて栽培していることです。
さらに、新米の美味しさが長持ちする工夫も凝らしています。翌年の夏頃まで新米の味を楽しめます。その秘密は、収穫後に籾をじっくりと乾燥させることです。
通常の農家は、一晩でいっきに乾燥させます。早い人は4時間で終えます。乾燥機に籾を入れ、加温された風を送り込み、籾の水分を飛ばす乾燥方法です。しかし急激な乾燥により、米はひび割れ、タンパク質や脂肪分の酸化が進み易くなり、古米臭をもたらす恐れもあります。
一方、吉田農産では、2週間かけ、ゆっくり乾燥させます。大きな乾燥施設に150トンもの籾を、数段に渡って積み上げ、除湿された常温の風を送り込む。大規模農園だからこそ実現できた施設です。
また、お米の美味しさを保持するために、玄米専用の冷蔵庫にて一定の低温で保管しています。保管中の品質低下を防ぐことができ、より良い品質を保つことができます。
電気代は嵩みますが、これらの工夫や美味しさへのこだわりで、季節を跨いで新米の風味を愉しめます。時間が経っても、そこはかとなく美味しいのです。
ほぼ残業のない大規模農場
吉田農産の設立は2006年1月です。先代から事業継承した際に、法人化にしました。当初は55haの農地から出発し、担い手不足に悩む離農農家から土地を預かることで、規模が大きくなりました。
設立から13年経った今、農地面積は96haにまで拡大し、うち水田が約65ha、ほかは蕎麦や大豆などです。加賀市の農家としては最大級です。社員が増えれば、100ha越えもいけると思います。
お米の収穫量は、年間5000俵(300t)ほどです。これだけの量を、たった6名の農作業員で栽培しています。にもかかわらず、田植えや稲刈りの忙しい月でも、残業が月間5時間以内に抑えられるのが、吉田農産の自慢です。
効率化で残業を減らす
設立時から効率的な農業を心がけ、トラクターやコンバインを導入してきました。また乾燥施設の活躍もあり、仕事が楽になりました。スイッチを入れれば、従業員はほとんど残業せずに済みます。
しかし、お金をかければ良い、という訳ではありません。機械を大きくする、量を増やすだけでなく、お金のかからない工夫を考えることも、農業の面白さです。
例えば「高刈り」という草刈り方法があります。田んぼの畦道に生える雑草を、地面すれすれに刈るのではなく、高い位置で刈ることで、雑草が生えにくくなる上、害虫を捕食するクモやカエルの棲み処を確保できます。
こうした技術的な農作業よって、仕事の結果が目に見えて表れるのが、面白いところです。
未経験者のポテンシャル
近年は農業機械もどんどん進歩し、未経験者でも農作業できる環境が整っています。
たとえばGPS搭載のコンバインやトラクターも開発されています。まず運転手が田んぼの周りを囲むように作業すると、その内側を自動で済ませておいてくれるのです。それゆえ素人でも歓迎です。3年ほどあれば、一通りの仕事は覚えられるでしょう。
効率よく、美味しいお米を作る能力は、意外と農業未経験者の方が高いかもしれません。昨今、農家もガラパゴス化しつつあります。サラリーマン経験が豊富な人の方が、農業と異業種を見比べられ、効率化も上手いのではと期待しています。
餅つきしながら商品開発
新春恒例、社内の餅つきイベントでは、変わり種を作って楽しんでいます。近年のヒットは「わかめ餅」です。近くの漁港で作られている「粉わかめ」を混ぜると、ほのかな塩気とワカメの旨みが、お餅に染みて、他にない懐かしい風味が広がります。
「わかめ餅は当たる」と思ったのですが、単価の高さと人手不足が壁となり、商品化は惜しくも断念しました。人材次第で、お米の可能性は、まだまだ膨らみます。
加賀は温泉観光地であり、菓子屋の集積地です。美味しいお米を原料に、製菓のプロフェッショナル達と組んで、商品開発に取り組んでみたい移住希望者も、ぜひご相談ください。
事業所データ
企業名:有限会社 吉田農産
代表者:吉田 義弘
正社員:3名(平成30年12月現在)
本社:〒922-0444 石川県加賀市宮地町ト23番
事務所:〒922-0444 石川県加賀市宮地町196番1
電話番号:0761‐76‐9280
WEB:http://yoshita-nousan.co.jp/