橋立海青学園から見える「考える力」を育む学び。
2025年4月、加賀市初の義務教育学校として新たに開校した「橋立海青学園」。社会を生き抜く力を身につけながら、同時に子どもたち一人ひとりの個性を伸ばす。そうした学びは、どのようにして日常の中で実現されているのでしょうか。その魅力を探るため、実際に学校を訪ねました。
※こちらの記事は、2025年12月の取材内容に基づいて作成しています。


海とともにある、小中一貫の学び舎。
児童生徒数153名、職員数36名。漁師町に位置するこの学校は、その名のとおり、校舎から青い海を望む設計になっています。校区内はもちろん、加賀市全域から通学することができ、校区外の児童生徒は大聖寺・加賀温泉駅・山代温泉・片山津温泉を経由するスクールバスを利用しています。
橋立海青学園は、「義務教育学校」として小中一貫教育を制度化した学校です。9年間を一人の校長、そして一つの教職員組織で運営するのが特徴で、加賀市では初の取り組みとなります。もともと同じ校舎に小学校と中学校が併設されていたため、いわゆる「中一ギャップ」はほとんどありませんでしたが、義務教育学校となったことで、より切れ目なく、継続した学びの環境が整いました。
前期課程・後期課程の児童生徒が合同で行う授業や行事も多く、学年の垣根を越えた交流が日常的に生まれています。年上の子が年下を気にかけ、年下の子は年上に親しみを持つ。そうした関係性が、自然と育まれています。
学校で一体となって繋がっているのは子どもたちだけではありません。先生同士も、前期・後期の枠を越えて日常的に打ち合わせを行い、合同授業にも取り組んでいます。そういった先生同士の距離感の近さも、学校の魅力的な雰囲気を作る、一つの要因となっています。
「わからない」を、そのままにしない授業。
今回は、7年生の国語と5年生の理科の授業を見学させていただきました。どちらの授業にも共通して感じたことが、大きく2つあります。
1つ目は、子どもたちが「わからないこと」を迷わず先生に聞いていることです。誰も質問することを怖がっていません。それは単に「何でも人に聞く」という姿勢ではなく、「自分の中に生まれた違和感や好奇心を無視しない」という態度が根付いているからこそ。
その背景には、子どもの「なぜ?」を大切に受け止める先生の存在があります。先生方が、子どもの好奇心を丁寧に拾い上げてくれるため、子どもたちも、わからないことをわからないまま放置しなくなります。先生に質問したり、自分の考えを伝えたりできる、そんな距離感が教室全体にあります。
授業では、CanvaやGoogleスライドなどのツールを自由に使うことができ、子どもたちは自分にとって使いやすい方法を選べます。課題やテーマ、時間配分といった授業の大枠は先生が示し、その中で学びやすい授業にするための「自由」をつくる工夫がなされています。


主体性を引き出す、委ねる学び。
2つ目は、子どもたちが主体的に学ぶ姿勢です。課題が与えられたとき、一人で黙々と進める子もいれば、友達と相談しながら取り組む子もいます。そのやり方は生徒によって違い、これがまさに「委ねる学び」の実践です。
大切なのは、全員が同じペース・同じ方法でゴールに向かうことではありません。ルートはそれぞれ違っても、自分なりの学びとして理解し、納得しながらゴールにたどり着くこと。その子に合った手段を選べるため、手段が目的にならず、探究心を伸ばす授業が実現しています。その間の生徒の進め方はクラスで共有されているため、先生も一人ひとりの進捗を把握しながら対応できます。
「委ねる学び」で難しいのは、「何を、どこまで委ねるか」。教科書で定められた学習内容を進めながらも、子どもが学びやすい授業設計を先生方が日々考えています。授業内容によっては、一斉授業を取り入れることもあり、学年が上がるにつれて委ねる範囲も少しずつ広がっていきます。その結果、授業中に退屈そうにしていたり、寝てしまったりする姿はほとんど見られなくなりました。自分の関心のあるテーマに主体的に取り組めるからこそ、子どもたちは前のめりに学び、先生はその主導権を子どもに渡しながら、そっと支えています。


14歳の発明家が、授業で誕生。
8年生の「総合的な探究の時間」では、「身の回りの生活をよりよくするものを考えよう」というテーマのもと、日常の中で感じる困りごとや、もっと便利にできそうなことを課題として設定し、生徒たちが探究に取り組んでいます。
例えば、「出席かぞえもん」というテーマでは、カメラとAIを使って出欠を確認するシステムを考案。「ナビサイン」では、標識をAIに認識させ、その指示に従って行動する仕組みに挑戦していました。先生自身も「実際に導入してみたい」と感じるようなテーマが、生徒から次々と生まれています。生徒たちの「ひらめき」が、技術と結びつき、「発明」になるのです。
5・6・7年生は「コース制」を取り入れ、自分の興味に応じたコースを選択。小学校高学年にあたる児童と、中学1年生にあたる生徒が同じコースで学ぶのも、小中一貫校ならではの学習環境です。探究学習の発表会も行われ、学年を越えて互いに刺激し合う機会となっています。
これらの探究は、先生が道筋を示して完成させたものではありません。子どもたち自身が考え、試行錯誤しながらたどり着いた成果です。だからこそ、プログラミングの技術だけでなく、「考える力」そのものが育まれていきます。
外部支援員の存在も重要なポイントです。先生が一人ひとりの児童生徒により丁寧に向き合えるよう、探究を共に支えています。学校の設備だけでは難しいことも、外部の機材を活用しながら実際につくってみる。子どもたちが、課題を「自分ごと」として捉えられる環境が橋立海青学園にはあります。


そこは、子どもが、自分らしく居られる場所。
先生方が共通して口にするのは、「子どもたちの仲の良さ」です。休み時間になると、年下の子が年上のクラスに遊びに行き、自然に会話が生まれています。生徒数が少ないからこそ、学年を越えた自然な関わりが生まれ、一人ひとりが無理のない距離感で学校生活を送っています。
橋立海青学園には、校区外から通う生徒も多くいますが、加賀市全体から児童生徒が集まる背景には、「多様な価値観や個性を受け入れる」学校の雰囲気があります。一人ひとりの得意・不得意を認め合い、その子の良さを評価することで、個性を伸ばしていく。橋立海青学園が大切にしているのは、単に知識を詰め込むことではなく、未来の課題に対して自分で考え、工夫し、行動できる力を育てることです。
開校してまだ間もない学校ですが、すでに変化も見られています。それは、子どもたちが「自分たちの学校が、地域に愛されている」という実感を持ち始めていること。開校に向けて、地域や保護者と何度も話し合いを重ね、開校式や制服選びにも多くの人が関わってきました。「一緒に学校を良くしたい」という地域の熱い思いが、子どもたちにも少しずつ伝わっています。
「自分たちの学校ってすごい」「この地域っていいところだ」。子どもがそう感じられることは、学校を好きになる大切な要素です。そして、その思いを持った子どもたちが、次の世代へと地域の魅力や文化をつないでいきます。
橋立海青学園の「ありのままの自分でいられる」空気は、熱意ある地域と先生、そして児童生徒を取り巻く環境が重なり合って生まれているのかもしれません。


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お試し住宅
申込方法滞在日程や参加者数などを、お問い合わせフォームにご記入ください
| 滞在期間 | 最大3泊4日 |
| 対象者 | 地方移住を検討中の方 |
| 宿泊費 | 無料 ※滞在中の食費は除く。 |
| 公共交通機関 | JR加賀温泉駅、大聖寺駅、小松空港 |