農薬を使わずに
お米を栽培する技術を
学びたい移住者募集

湯気の立ち上る炊き立てのご飯。炊飯器からはつやつやと光る白米が顔を出し、ほんのり甘い香りが立ち上る。一口ほおばれば、ふっくらとした食感と、やさしい甘みが口いっぱいに広がる。そんなお米を、自分の手で育ててみたいと思ったことはありませんか?

石川県加賀市で収穫された「加賀ティール米・ブルーラベル」は、まさにそんなお米です。美味しいだけでなく、化学農薬や化学肥料を一切使用しない農法で作られているとあって驚きです。

ティール(teal)とはカモ類を意味する英語です。実は、この町とカモには深い関わりがあります。何を隠そう冬の石川県加賀市は水鳥の楽園。水田や湿地、潟湖にカモの群れが降り立つ景色は、この温泉地では冬の日常風景なのです。

こうした越冬のために飛来した水鳥たちと、共生する農法を模索することは、地域の自然や生態系を守ることに繋がります。そこで農薬を使わずに美味しい米を育てる農法が求められるわけですが、そんな方法を実践する団体こそ「かが有機農法研究会」です。

その技術を次世代へ受け継ぐため、私たちは新規就農者の受け入れを応援していきたいと考えており、移住支援の取り組みをInstagramやWEBサイトで発信しています。その結果、果樹栽培などの分野では2024年度~2025年度にかけ、アルバイトや地域おこし協力隊などの形で、8名の新規就農者などが引っ越してきてくれました。

この記事では現役プロ農家への取材をもとに、米農家として安定した収入を得るための方法について検討していきます。

取材協力
かが有機農法研究会
田中 友晴 様
村田 泉 様
2025年5月

 

有機農業とは?加賀市には水鳥たちと共生する農業に取り組む農家さんがいます。

柴山潟の湖畔には温泉旅館が軒を連ね、冬になると水辺にカモが訪れる。

有機農業とは、化学肥料・農薬に頼らず、自然の力を生かして作物を育てる農業のことです。

「有機農業の推進に関する法律」による有機農業の定義は以下のとおりです。
・化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない
・遺伝子組換え技術を利用しない
・農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する、

このように化学肥料・農薬を頼らず、自然の力を活かして作物を育てる農業は、石川県加賀市でも取り組まれています。それが「かが有機農法研究会」によって栽培される加賀ティール米です。

毎年、「かが有機農法研究会」では約10haの農地を活かして、3.6t程のお米を収穫しています。そのお米は国内に加えて、ドイツやフランスなど海外でも好評を博しています。

このように加賀市の米農家さんたちが、有機農業を研究する背景には、水鳥たちへの配慮があります。冬場、田んぼの落ち穂をカモたちが食べるため、化学肥料や農薬に頼らない農業を実践しています。

※有機農業の推進に関する法律(平成18年)に基づくもので、有機JAS認証に限定されるものではありませんが、農法や資材はJAS有機に準拠しています。加賀のティール/加賀市

 

なぜ有機農業を研究するのか?

有機農業とは、自然と伝統を守る方法でもあります。殊に石川県加賀市においては、カモと猟と農業が密接に結びついた農耕・狩猟文化が形成されています。

たとえば石川県加賀市の片野鴨池は、絶滅危惧種のトモエガモをはじめとするカモ類やガン類、コハクチョウなどの水鳥たちの塒(ねぐら)として重要な環境であり、1993年にラムサール条約登録湿地に指定されています。

そして、この鴨たちを狩猟する文化「坂網猟」も江戸時代から受け継がれており、鴨料理を提供する和食店もあります。

こうしたカモたちの餌となっているのが、田んぼの落ち穂です。落ち穂を食べ、脂を蓄えたカモを猟師たちが捕獲し、それを治部煮にして食べる。すき焼き風のタレで、ご飯が止まらない。こうした農耕と狩猟と郷土料理の循環を支えるうえでも、生き物と共生する農業は欠かせない存在です。

 

水鳥と共生しながら、美味しいお米を育てる秘訣。

水田に訪れたコハクチョウ
田んぼに穴を開ける厄介者でもある
コハクチョウは夕方になると帰り、夜にはカモたちが水田に訪れる。

かが有機農法研究会には、自然と共生しながら美味しいお米を育てるためのノウハウも蓄積されています。たとえば、米ぬかをペレット状に固めて田んぼに撒くことで、草の生えにくい水田環境を作っています。

こうして育てられた米は、あじわいも一味違います。ふっくらと炊き上がったその白米は、つややかで、甘みが際立つのです。土鍋で炊けば、尚のこと。立ちのぼる香りだけで、思わずお腹が鳴るほどです。一口ほおばれば、もっちりとした食感とともに、やさしい甘みがじんわりと広がる。そのまま食べても、塩むすびにしても、まさに“ごちそう”です。

だからこそ「かが有機農法研究会」では、自然に寄り添いながら、おいしいお米を届けています。それは、単なる仕事を通り越して、世代を超えて受け継いでいきたい営みであり、この土地と生きることそのものです。

このようにカモたちと共生し続けるためにも、新たな担い手が欠かせません。私たちは、これから農業を始める方々には、有機農法にも興味を持ってもらいたいという想いから、現役プロ農家さんに米農家になる方法を伺いました。

 

米農家になるには?

米農家になるには、「農地」と「設備」と「栽培技術」が欠かせません。農家の高齢化の影響により、農家は減少傾向にあり、タイミングよく空いた農地や設備を借りることができれば、居抜きのように農家になることができるかもしれません。

こうしたチャンスを掴むためにも、まずは栽培技術を学ぶ必要があります。かが有機農法研究会の農家さんたちのなかには、アルバイトを募集している農家さんもいます。

また「地域おこし協力隊」という制度を活用できれば、おおむね月18万円の給与+年間200万円の活動費を得ながら、農業について学ぶこともできるかもしれません。

最長3年間の活動期間中に栽培技術を習得しつつ、地域住民との良好な関係を築くことで、離農者から農地や施設を継承しやすくなります。

就農を目指す際には、様々な選択肢が考えられるため、お気軽にご相談ください。

新規就農においては、移住が前提となるケースもあります。そこで石川県加賀市では無料で泊まれる「お試し住宅」を設けており、まずは地域の生活環境等をご覧いただくところからサポートしています。

 

米農家としての年収を高めるには?

農業で心配なのは、年収がどれくらい得られるのか、ということでしょう。

かが有機農法研究会の農家さんたちも、農薬不使用の栽培と慣行栽培との両方に取り組むことで所得を安定させています。加賀市では10haの農地で水稲を栽培することで、約380万円の所得を得られると推計されています。

より収入を高めるには、栽培面積の拡大や、独自の販路開拓も効果的でしょう。

また米の繁忙期と重ならないよう、ほかの作物を栽培することも有効です。実際、加賀市の農家さんは、水稲を育てながら、ブロッコリーやカボチャ、麦や大豆、トマトなども栽培することで収入を高めています。

このように、初めから有機農業に専念するのはハードルが高いため、まずは慣行栽培をベースに年収を安定させながら、徐々に有機農業のノウハウを取り入れていく方法もあります。

加賀市の農家さんたちのもとで働きながら、農業を学びたい方は、まずはご見学にお越しいただければ幸いです。

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