農薬を使わずに、美味しい野菜を育てる秘訣を探求する仲間を募集します。

加賀市では、農業の担い手(地域おこし協力隊)を募集しています。

日本各地で問題となっている農家の高齢化は、やがて担い手の減少に繋がり、人々の食生活にも影響を及ぼす可能性があります。一次産業の衰退は、私達が手軽に買える地場野菜が少なくなる事態を招くかもしれません。

食の豊かさを守るためにも、移住して農業に取り組みたい方を随時募集しています。「地域おこし協力隊」として働きながら、月18万円の給与+年間200万円の活動費が最大3年間まで受け取れます。ミスマッチを防ぐため、移住体験を重ねながら、応募希望があれば、その都度、採用を考えていく方式を取っています。

まずファーストステップとなるのが、最大3年間の任期を通じて、農家さんのもとで栽培技術を習得する段階です。その先、独立するのか、受け入れ先の農園で働き続けるのかを検討いただく機会として「地域おこし協力隊」をご活用ください。

石川県加賀市では地域の農家さん、農林水産課、移住支援の窓口などが連携しながら、多方面からのフォローを行っています。この記事では、連携農家さんの1つである久保田ファームさんをご紹介します。

※この記事は、2024年4月の取材をもとに作成しました。

 

農薬を使わずに、買いやすい価格で。

石川県加賀市大聖寺下福田町に、日々食べる野菜を化学合成農薬を使わずに育てている農家さんがいます。農薬に頼らない農法を試行錯誤しながら、かれこれ10年以上もトマトを育ててきました。

久保田ファームは脱サラ就農したご主人が始め、現在は奥様が中心となって野菜の世話をしています。農薬を使わずに栽培された野菜を、お客様が毎日食べられるようにリーズナブルな価格で販売することを目指してます。

この農園の土には塩分が微量に含まれていると言われています。すくそばに日本海があり、近隣を流れる大聖寺川には海の魚ものぼってきます。地下水にも塩水が含まれているようで、こうした環境がトマトにとってはストレスとなり、より甘みを蓄えます。

栽培しているトマトは、フルティカやイエローミニなど4種類ほどです。袋栽培も行っており、もみ殻や堆肥を混ぜた土を使っています。土を交換できるため、病原菌などの繁殖を抑えられ、連作障害が起こりにくいという利点があります。

土に混ぜているもみ殻は腐りにくく粒が大きいため、土壌に空気を含ませる役割があります。このように農薬を使わない栽培技術を蓄積するため、さまざまな実験と試行錯誤を繰り返す姿勢を大切にしています。

 

無農薬野菜とは?

久保田ファームでは、玉ねぎやレタス、ほうれん草、ネギ、ブロッコリー、カリフラワー、枝豆、イチゴなど10種類以上の作物を育てています。基本的には農薬を使わないという方針で、有機JASの基準も参考にしながら栽培してきました。お客様と話し合いながら基準を作っていきたいと考えています。

ここで生産者が注意しなければならないことの1つが、誤解を招く表現です。「無農薬野菜」「無農薬栽培」という言葉をよく耳にしますが、この「無農薬」という表現は、実は適切ではありません。「栽培期間中に農薬不使用」と言い表すほうが的確です。なぜかと言うと、自分が農薬を使わずに栽培していても、近隣の農家さんから農薬が飛散してくる恐れがあるためです。そもそも野菜の種子が、すでに消毒されていることもあります。

そのため「無農薬」と謳って販売することは、消費者に誤解を与える恐れがあります。農林水産省も「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」によって禁止事項として掲げています。

写真手前の畝はレタス。奥にあるブロッコリーの畝は防虫用のカバーで覆い隠している。

もう一つの問題が値段の決め方です。本来、農薬は病害虫や雑草を抑えるために使用されます。それを使わないということは、別の方法で対策しなければいけません。それゆえ生産コストが高くなり、付加価値の高い食品として高価格帯で販売されることもあります。こうした動向に一石を投じているのが久保田ファームです。

野菜は毎日の生活に欠かせない食品です。だからこそ高すぎない値段設定が肝心だと考えています。それゆえ久保田ファームでは、日々食べる野菜をお買い求めいただきやすい価格で販売することを心掛けています。

 

じっくりと育て、しっかりと成熟させる。

美味しい野菜を届けたいという想いから、じっくりと栽培することを心掛けています。市場に流通しているトマトのなかには少し青い状態で収穫し、流通過程で赤くなっているものもありますが、久保田ファームは異なります。実が赤く熟するのを待ってから収穫することで、トマトに味がのってきます。ご年配の方に食べてもらったところ「昔、食べていたトマトの味がする」と懐かしんでいただけました。

ただし、風味を良くするためとはいえ、栽培期間が長くなる分、病害虫や天候によるリスクも増えます。その対策は日々模索しており、改善策の一つが多品種栽培です。ある野菜で失敗しても、別の野菜でカバーできるよう、久保田ファームでは様々な品種を育てています。これにより「リスクの分散」を図っています。

 

食べる人、料理する人の声を聴く農園

ネギはまっすぐの方が見た目はいいかもしれませんが、曲がっているほうがストレスがかかり、甘くなると言われています。こうした曲がりネギは、東北地方に伝わる栽培方法です。

お客様の声を聴いてみると、見た目が少し不格好でも、味や香りの濃いほうをお求めになる方もおられます。こうした発見を得るためにも、野菜を食べる人や、料理する人と対話する機会は農家にとっても重要です。これからも農園にさまざまな人を招けるように、歩きやすい畑づくりも進めています。

久保田ファームでは除草剤を使っていないため、畑には背の高い雑草が生い茂ってきます。そこで春先にクローバーの種を撒き、雑草の繁殖を抑えると同時に、緑肥や窒素固定の効果を狙って、作物が育ちやすい土壌へと改善する試みも行っています。

お客様の声には多くのヒントが隠されており、それを見つけることが農家にとってのモチベーションアップにも繋がります。そのため直販やマルシェ企画も視野に入れています。6次産業化も手掛けており、トマトソースや玉ねぎのピクルス、醤油ベースのネギソースなどを作るための加工場も畑に設けました。美味しい野菜で作るソースなどは自慢の一品です。

 

毎日食べる野菜を、農薬を使わずに育てる。そんな想いに共感してくれる仲間を増やしたい。

「農薬を使わない。じっくりと育てる。それを買いやすい価格で届ける。」という営農方針でも、農家として成り立つことを久保田ファームは証明しています。こうした農家さんを増やすことによって、日本の一次産業はさらに豊かになるのではないでしょうか。

慣行栽培とは違う方法で農業に取り組むことには、失敗もつきものです。久保田ファームでは、これまでも色々な実験を繰り返し、農薬を使わずに育てられる野菜を増やしてきました。

これから地域おこし協力隊として就農を始める方も、失敗を恐れず、その都度、軌道修正を繰り返す気持ちを大切にしてもらいたいと考えています。トライ&エラーを臆さない心構えでお越しください。

実験をベースに農家が育つ仕組みを作る効果として、個性豊かな生産者が地域内に増えていく状態が期待できます。そして販路開拓などを一緒に取り組めるような生産者ネットワークを生み出し、一次産業に明るい未来を描いていきたいと考えています。

 

事業所情報

事業所 久保田ファーム
住所 石川県加賀市大聖寺下福田町8-75
電話 090-3982-4902

 

農業分野で地域おこし協力隊になるには?

1.移住体験
最大3泊4日で滞在できるお試し住宅をご用意しています。農園見学や就農体験に加え、生活環境の視察や住まい探しもお手伝いしております。暮らし全般に関するトータルサポートを心掛けております。

2.農園見学など
受け入れ先となる農園との相性も確かめましょう。さらに農林水産課などが提供している各種支援メニューなどもチェックします。

3.地域おこし協力隊として採用
面接などを通じて着任が決まり次第、移住の準備を進めましょう。

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