大玉の甘い梨を育てる技を学び
農家として独立したい
移住者を応援します

石川県加賀市の梨産地である小塩辻(おしおつじ)町は、甘みののった大玉の梨を栽培する技に秀でており、この技術を次世代へと受け継ぐため、新規就農者を受け入れる体制づくりを進めています。

梨栽培では、約1haの農地を活かして600万円前後の収入が得られると試算されています(※注釈1:記事末尾を参照)。このような農家として独立するには、少なくとも「栽培技術の習得」「農地の用意」「機械・設備の取得」「販路の開拓」という4つのハードルが考えられます。

この記事では、プロの農家への取材をもとに、これらをどのように乗り越えると良いかをご紹介します。

小塩辻町では「梨生産組合」が存在し、19軒の農家が組合員として栽培に携わっています。こうした産地では梨栽培に必要な機械・設備や販路などがすでに整っています。そのため新規就農者は栽培技術の習得に専念できます。設備投資や販路開拓にかかる宣伝・営業といった初期コストや労力をかけずに梨栽培を開始するには、組合に入ることがおすすめです。

それでは小塩辻町では、どのような栽培技術を身につけられるのでしょうか。その一例をご紹介します。

取材協力
小塩辻梨生産組合
瀬戸 聖和さん
(この記事は2023年3月のインタビューをもとに作成しました。)

 

栽培技術
みずみずしく甘い大玉の梨を育てる秘密

桜が散ったころ、梨畑では白い花が咲き始めます。春は、美味しい梨を育てるために重要な時期でもあります。花が実をつけるには花粉の存在を抜きには語れません。小塩辻町の農家さんは、一つ一つの花への受粉を手作業で行っています。どの花でも良いわけではありません。まん丸とした立派な実のなる花を見極めて花粉をつけるという熟練技が求められます。人が梨の受粉を手伝うことで、ひとつの花により多くの花粉をつけることができ、この手間を惜しまない姿勢こそが、大玉の梨を育てることに繋がります。

高品質な梨を、いかに沢山つくれるかという視点も、農家としての収入を高めるうえでは欠かせません。そのため受粉だけでなく、剪定も重要な仕事です。

衰えた枝は切り落とし、十分に花を咲かせる若い枝を残すことで、より多くの実をつける木が育ちます。こうした枝の剪定作業は、収穫を終え、落葉した晩秋から春先にかけて行われます。剪定においても、どの枝を残すかという見極めが肝心となります。

小塩辻町では、このような栽培技術を働きながら身につけられる環境を設け、3年ほど経験を積んだのちに、農地を借り受け、独立を支援する体制構築を目指しています。

受粉は、梨の商品価値を左右する重要な作業。
立派な梨を実らせる花があり、見極めるコツがある。
花粉を吸いこまないためのマスクとサングラス

 

農地さがしのコツ
農家同士が支え合う風土に溶け込む

小塩辻町には梨生産のプロが集まっており、栽培ノウハウを学びやすい環境と言えるでしょう。就農の初期段階では、栽培技術の習得に専念したいところです。

小塩辻町では、梨の生産と流通を支える「農家同士の連携体制」「機械・設備」「販路」が整っており、栽培技術の習得に専念できる環境と言えます。

農家同士の連携については「共同防除」や「ネットかけ」といった作業が挙げられます。例えば、共同防除は産地全体を一斉に農薬散布しており、より効果的に梨を病気や害虫から防ぐことができます。また、カラスなどの鳥害対策として畑にネットをかける作業は一人では難しいため、組合員が協働し、高品質の梨を守り合っています。

このように生産組合として農家同士が支え合う風土が根付いていることも就農しやすい理由の一つではないでしょうか。見方を変えれば共同作業があるからこそ、新規就農者が孤立することなく産地の仲間入りがしやすく、安定した農業経営に繋がると言えます。

農家の高齢化や担い手不足という状況下では、小塩辻町においても管理が行き届かなくなる梨畑が増えてくることが予想されます。新規就農者が産地の一員として共同作業し栽培技術を習得することで、将来的に畑を任される可能性が見込めます。

 

設備を活かす
梨の質を可視化する選果場

自分の育てた農産物が、果たしていくらで売れるのか。その品質を新規就農者が判断するのは難しいかもしれません。こうした問題は「共同選果場」を頼ることで解決できます。選果場は、収穫と出荷の橋渡し的な存在を担っており、その役割は見逃せません。

小塩辻町では、収穫された梨は、各農園から選果場へと持ち込まれたあと、ベルトコンベヤーで運ばれ、サイズごとに自動で仕分けされます。さらに梨の糖度がセンサーで分析され、自分の育てた梨が客観的なデータに基づいて評価されます。

選果場を通じて、サイズや糖度などを数値化したデータを毎年得ることで、栽培技術の向上も実感できます。農家として熟達するにつれ、梨の収量・品質も上がり、収入も高まる、といった一連の流れも生まれます。この仕組みを選果場が可能にしています。

このように梨生産組合の一員となることで、産地が長い年月をかけ、築き上げてきた合理的なシステムの恩恵を受けることができます。そしてもう一つの利点に、「販路」がすでに確立されていることも挙げられます。

 

既にある販路を頼る
流通ルートが確立されているため、農家になりやすい。

美味しい梨を育てることができても、売る手段がなければ収入を得られません。新規就農者が稼ぐには、組合が築いてきた販路に頼る方法をおすすめします。

小塩辻梨生産組合では、これまでに培った流通網が、県内外への出荷を可能としています。収益については1haあたりの農地で約1200万円の売り上げがあり、そのうち農業所得として半分ほどが手元に残ると言われています(※注釈①)。小塩辻町の梨は品質に優れており、毎年購入する固定客やファンもいます。お中元などの贈答品としても用いられ、その産地ブランドも確固たる地位を築いています。

すでに販路が確立されているということは、就農の初期段階において宣伝・営業にかけるコストが必要なくなります。

このように産地の利を生かすことで、梨の栽培技術の習得に多くの時間を費やすことができます。新規就農に興味のある方は、ぜひ小塩辻町で梨の栽培方法を学んでみませんか。農園見学や移住相談など、お気軽にお問い合わせください。

 

※注釈①就農アドバイス
梨の農家の年収は、あくまで目安です。農地の条件や販路、農家の営農方針や技術によっても収入は異なります。また独立直後に1haの農地を預かっても、すべて管理しきれない可能性もあります。まずは手の届く範囲から始めるぐらいの心構えを持っておきましょう。

事業所 小塩辻梨生産組合
所在地 JA梨選果場
石川県加賀市小塩辻町34
業務内容 梨の栽培、収穫、出荷など。
目標 梨栽培の技術を習得し、農家としての独立を目指す方を応援します。
生産者数 19軒
必要な資格 普通自動車運転免許

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農園見学と仕事体験で
新規就農から独立までを
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新規就農をサポートするために、農園見学を受け入れております。農家さんや就農の相談窓口を訪ねることで、新規就農を経て、独立するための方法をお伝えします。

また梨園では剪定、受粉、摘果、収穫などと年間通じて様々な仕事があります。その一部だけでも体験いただくことで、農作業を苦労や魅力を感じていただけます。新規就農で失敗しないためにも、農園見学や仕事体験にぜひお越しください。

加賀市では「お試し住宅」をご用意し、最大6泊7日までの滞在を、無料で受け入れております。

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