15歳の高校生たちが、わずか370分で「地域留学」を企画。

まるでジェットコースターのように駆け抜ける授業。

そんな体験をしたのは石川県立大聖寺高校の「総合的な探究の授業」を受けた高校生たち、約160名。まだ高校1年生になったばかりの15歳が、たった370分(わずか3回の授業)でプレゼン資料まで作り上げる。

とあるクラスでは“移住者を増やすための地域留学プログラム”を企画し、プレゼン発表までやり遂げました。
なぜ高校生たちが、ここまで短期間で地域課題に挑めるのでしょうか?

2021年度から2024年度にかけ高校魅力化プロジェクトに取り組み、2024年度には「STEAM教育推進校」に指定された大聖寺高校へ突撃取材。

子どもたちの能力を引き出す、その秘密に迫ります。

※この記事は2025年5月~7月にかけての「総合的な探究の授業」に基づいて作成しました。

大聖寺高校に集う、ユニークな大人たち。

第1回目の授業は2025年5月、ゴールデンウィーク直後でした。この日、大聖寺高校には8つの地元企業などが集まりました。製茶会社やメーカー、ゲストハウス運営者やキャンプ場運営者、創業を支援している商店主など、地域の第一線で活躍する豪華メンバーが集結。高校生たちの発想を触発するトークが繰り広げられました。

光栄なことに、私たち移住コーディネーターにも声がかかり、そのテーマは「人口減少と移住促進」。山、海、そして温泉に恵まれた石川県加賀市の魅力を、都会のファミリーに伝える方法を、約20名の生徒たちと一緒に考えました。

「ファミリーが移住したくなる地域留学プラン」を企画する授業のはじまりです。

どのように移住者を呼び込むか?という正解のないお題と、生徒たちは向き合います。

伝統建築と出会うフィールドワーク、笑い声の響く授業。

初回の授業は、地域資源を発掘するフィールドワーク。旧城下町の風情を残す大聖寺地区には、町屋建築や寺院群、さらには九谷焼美術館など、文化観光に活かせる資源が豊富です。

今回は蘇梁館(そりょうかん)に訪問。コスプレ体験で大笑いする高校生の姿も。

遊びの中から学びを見つけることが、探究の第一歩。わくわくするような没入体験が、学びを加速させます。

こうした伝統建築を維持していくためにもお金が欠かせません。地域にお金を巡らせることも頭の片隅にインプットし、地域留学プランを企画します。こうして伝統を未来へとつなぐ方法を議論しました。

3分で本を読む、アイデア発想法。

第2回の授業では、アイデアを広げるために「3分読書」に挑戦しました。

キーワードを拾い、仮説を立てながら読むことで、想像力がパッと広がります。集めた言葉をグループで組み合わせ、「伝統建築×本の言葉」から新しい企画コンセプトを生み出しました。

選んだ本は、「移住」や「伝統建築」とは全く関係のないジャンル。本というアイテムを介することで、異分野の知を無理やり結び付けるワークがつくれます。その結果、生まれたコンセプトは多種多様。

「工芸を楽しむ留学」「温泉地の未来をつくる留学」「温泉で瞑想するデジタルデトックス留学」など、ユニークな企画が次々と生まれていきました。

1ページ1枚、シンプルなプレゼン。

第3回ではプレゼン資料づくり。ルールは「1ページにつき写真1枚&ひと言」。余計な装飾を省き、映像が浮かぶ言葉で伝える訓練です。わずかな時間で高校生たちは驚くほどの集中力を見せ、ユニークな企画を形にしていきました。

ちなみに他のクラスでは、和菓子屋とコラボして新感覚スイーツを開発した生徒たちもいました。実際に文化祭で販売するなど、単なるプレゼンに留まらず、実行に移すといった展開も見られました。これぞ実践的な学びです。

加賀市全体に広がる「STEAM教育」とは?

このように大聖寺高校では「課題解決型の学び」「分野横断型の学び」「実践型の学び」などに取り組まれています。これらはSTEAM教育という形で束ねられ、学校現場で取り入れられています。

STEAM教育とはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5つの単語の頭文字を組み合わせた教育概念。

2025年9月現在、大聖寺高校はSTEAM教育推進校に指定されており、各教科等での学習を実社会での問題発⾒・解決に⽣かしていくための教科等横断的な学習・授業を推進しています。

大聖寺高校での実践とは別に、加賀市全体でも教育改革に取り組んでいます。2021年~2025年3月かけて活動した「高校魅力化プロジェクト」をはじめ、2023年からは小中学校にて「Be the Player」を掲げ、STEAM教育を導入。保育園でもレッジョ・エミリア・アプローチを取り入れるなど、保育から高校まで一貫して“探究的な学び”を支えてきました。

つまり、高校生たちが挑む地域探究は、小中学校時代から育まれてきた力の延長線上にあるのです。加賀という町そのものが、子どもたちの未来を後押しする大きな学びのフィールドになっているのです。

教育改革を進める加賀市。もしこの町で子育てしてみたいと思ったら、ぜひ移住体験にもお越しください。仕事探しや住まい探しをサポートしております。

移住体験