人の集まる里山を一緒に育てる仲間募集

里山では、農耕、山菜採り、キノコ栽培、釣り、狩猟などにより、自然から食料を調達する暮らしを営めます。家庭における食料自給率をいかに高めるかを考えたとき、里山が果たす役割は小さくありません。

さらに、隣接する町の特徴に応じて、里山にはより多様な機能を見出すことできます。

たとえば石川県加賀市には3つの温泉観光地「山代」「山中」「片山津」があります。それぞれの地名には山が付いており、実際、町のすぐそばに山があることが共通の特徴として挙げられます。

隣接する「温泉地と里山」からは、どのような相互作用を引き出すことができるでしょうか。この問いを考えることは、人の集まる限界集落という1つの解に辿り着くと思われます。

このような観点から、この先もずっと豊かな森を守り、町を創り、継いでいくためにも「人の集まる里山づくり」に協力してくださる方を募集しています。そこでフィールドワーク型の移住体験プログラムを設けました。

■このプログラムで体験できること
・里山、温泉街、城下町などを歩くフィールドワーク
・町と里山の繋がりを探る
・これからの暮らしを考える

■対象者
・移住して里山で暮らしたい人
・町で暮らしながら、里山に関わりたい人

移住検討者向けに、最大3泊4日まで泊まれる滞在拠点「お試し住宅」もご用意しております。

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里山とは?豊富な価値を秘めた宝の山。

石川県加賀市東谷地区

里山とは「人の影響を受けた自然環境」を意味し、そこには集落や山林、農地、ため池、河川などが含まれます。それとは反対に、原生林のような「人の手が加えられていない自然」は、里山の範囲外ということになります。こうした原生自然と都市空間のあいだにある地域が、里山です。

原生自然は、人の手が加わることによって、人にとって有益なものになっていきます。山菜採りや炭焼き、稚魚の放流、耕作などを通じて、食料や生活財などを自然界から調達しやすい環境が育まれていきます。

ここで配慮しなければならないことは、里山から資源を取り尽くさないことです。薪や木炭、建材が必要だからといって、むやみに木を伐採することで、かつて日本各地に「はげ山」が生まれました。木が生えず、土が剥き出しになったのです。山林には「水源涵養」や「雪崩防止」などの機能があり、山林を荒廃させることは、後々、自分たちの首を絞めることになります。

東谷地区の大土町には、小さな棚田が残っている。

そこで森を守ることが重要になってくるのですが、それは水源を保つことにも繋がります。

森林の地面には、落ち葉や木の枝が堆積しています。微生物や土壌生物の働きによって、地中にはたくさんの孔が生まれ、ふかふかの土になり、まるでスポンジのように雨を吸い込みます。そして地下水として蓄え、自然と水をろ過しながら、少しずつ川に流れていきます。

東谷地区の大土町から湧き出る水

それゆえ大雨が降ったときもすぐには川が溢れず、日照りが続いても川の水はちょっとやそっとでは枯れません。森林が水を蓄えることで、洪水や渇水を防いでいるのです。このような働きを「水源涵養」と呼びます。

しかしながら、この豊かな里山も、人口減少や高齢化によって限界集落になってきています。それゆえ、より多くの人に関わっていただく、きっかけづくりが重要となります。

 

限界集落とは?里山の抱える課題

限界集落とは、「集落人口の50%以上が65歳以上となり集落機能の維持が困難になっている集落」を意味しています。こうした集落では、農業や草刈り、水源・水路の手入れ、祭りや郷土料理の継承などが徐々に難しくなってきています。

それゆえ草刈りや水路掃除を行う際にも、個々への負担が大きくなり過ぎないような仕組みづくりが重要になります。たとえば近隣の町との協力し合う体制を作るほか、外部から農村ボランティアを募集するなどの方法が考えられます。

それとともに共同作業が楽しいものになるような仕掛けを生み出す視点も大切です。自然のなかで汗を流す体験は、ジムやサウナでは得られないような開放的な感覚を味わえます。

毎年7月下旬から漁が解禁される鮎を、塩焼きにする。

作業後に喉を潤すドリンクや、湧き水で顔を洗う爽快感、農家さんとのコミュニケーション、青空を眺めながらのBBQなど、こうした小さな感動を拾い上げ、大きな魅力へと織り上げていく感性が大事です。

草刈りや水路掃除を、単なる肉体労働として捉えるだけでは、つらいものになってしまいます。そうではなく、苦労のなかにある「ねぎらい」を参加者全員で共有する仕掛けが、共同作業を楽しいものに変えるのではないでしょうか。

 

フィールドワークを通じて、人の集まる里山づくりを考える。

このフィールドワーク型の移住体験では、ちょっと先の将来を想像することを第一の目的にしています。町を歩きながら、その土地のことを深く知り、「もしも自分がここで暮らし始めたらどうなるか?」を考えていきます。

そして現地のコーディネーターが仕事・住まい探しなどについてもお手伝いし、移住に向けて伴走するようにサポートします。

■このプログラムで考えたいこと(例)
・これからの里山では、どのような仕事を生み出せるか?
・暮らしと環境保全を繋げる、サスティナブルな住まいとは?
・草刈りや水路掃除などを楽しいアウトドアに変えるアイデアとは?
・自分が地域でできることは?
などなど

 

フィールドワークの候補地

このフィールドワーク型の移住体験では、のんびり、じっくり、気の向くままに、これからの地域の暮らしを学んでいきたいと考えています。ご希望の所要時間を伺いながら「東谷地区」「加賀温泉郷」「大聖寺地区」などをご案内します。

訪問先の候補には、炭焼き村や温泉街なども含まれ、そこは人々の生活に熱エネルギーを提供する役割を果たしてきました。囲炉裏や温泉など、温もりのある空間には人が集い、共同体が形成されます。

これからの地域を熱く盛り上げ、心もホットにする、そういった人々が自ずと集まる「文化の熱源」を生み出していくには、どうしたら良いか?を考えるにあたり、私たちが最適と思うフィールドワーク候補地をご紹介します。

 

⒈炭焼きを生業としていた東谷地区

東谷地区では、木造の伝統建築、囲炉裏と煙出し、屋根を飾る赤瓦、湧き水の流れる水路、曲がりくねった道路、山並みと古民家が創り出す風景が、山林のあちらこちらに点在しています。

町は赤瓦葺きの農家建築の集合体であり、地形の影響を大きく受けています。

谷のかたちにそって町並みが細く伸びることもあれば、山の斜面の平らなところに町が丸く収まることもあります。

かつてこの地区で暮らしていた人々は、「製炭」や「焼畑」を担っていました。藩政期の宝永元年(1704)には、荒谷・今立・大土・杉水などの村で大聖寺藩の御用炭を生産していたことが知られています。

今もなお、山中には炭焼き窯の跡が残されています。これらは山と人の結びつきを物語る遺跡です。

 

⒉薬湯の風習が残る加賀温泉郷

山代温泉の古総湯
山中温泉の鶴仙渓
片山津温泉の柴山潟

温泉街は、地元民と観光客が行き交う空間です。青々とした山並み、清らかな渓谷、おおぞらを映す潟などと隣り合い、それぞれの温泉地がまったく異なる町並みを生み出しています。

商店、旅館、住宅も軒を連ね、温泉を中心とした小さな都市のような景観となっています。

こうした温泉街は加賀市内に3つ、小松市に1つあり、それらが「加賀温泉郷」として束ねられ、分散型の温泉都市を形成しています。いずれも山との関わりが深く、山代温泉・山中温泉・片山津温泉はそれぞれ「薬師山」と呼ばれる小高い山を有しています。そこには寺院が建ち、薬師如来を祀っています。薬王院温泉寺や医王寺などの名前から分かるよう健康への願いが込められています。

この町に受け継がれる「菖蒲湯」は、その代表的な風習です。旧暦の端午の節句にあたる6月上旬、湯船に菖蒲を浮かべた薬湯によって、芳しい香りに浴室が満たされるとともに、無病息災を祈願します。山代温泉では「菖蒲湯まつり」という形で、一連の儀式と神輿がパレードのように地元民に親しまれながらも、民俗信仰として受け継がれています。

近年の予防医学やヘルスツーリズムへの関心の高まりを鑑みて、薬湯のレパートリーを四季折々に多様させることを考えたとき、山などに生えている薬用植物が活躍するのではないでしょうか。放置山林という課題の突破口の先には、湯治文化のすそ野を広げる答えがあると予感しています。

 

⒊城下町の面影が漂う大聖寺地区

鴻玉荘(こうぎょくそう)
熊坂川沿いの桜並木
錦城山から大聖寺地区を眺める

大聖寺(だいしょうじ)地区の特徴の1つは、道が碁盤の目状に交差した城下町です。木造の町屋、山ノ下寺院群、鴻玉荘、蘇梁館、石川県九谷焼美術館などが建っており、まるで町全体が名建築のライブラリーのごとく佇んでいます。古めかしい屋内に入ると、小説の1ページをめくるかのように、たちまち別世界へたどり着き、建物を通じて先人の知恵に触れられます。

こうした伝統建築を見守るように、城下町の背後にどっしりと構えているのが「錦城山(きんじょうざん)」であり、かつては天然の要塞としての役割を果たしていました。標高63mの低い山でありながらも急斜面をなし、さらには眼前を横切るように流れる大聖寺川は、そのまま堀にもなり、外敵の阻む防御力に優れていました。

錦城山に築かれた城は、1615年の一国一城令により廃城となり、今はその姿を見ることはできませんが、山城としての面影はくっきりと残っています。横堀や土塁といった明らかに人の手が加えられた遺構を見ることができます。

しかしながら、こうした城郭の痕跡を、消し去ろうとするように草木が絶え間なく繁殖しています。自然の復元力は凄まじく、城址は木々に囲まれ、文明が自然環境に飲み込まれていく様も伺えます。

ここに城があったという痕跡を守るためには、山を管理する必要があります。今日、錦城山が明るく歩きやすく整備されているのは、錦城山城址保存会による草刈作業などの賜物です。かつてこの町に城が築かれた歴史を後世に伝える学習環境として、大きな役割を担っています。

 

参加方法

⒈まずは「お問い合わせフォーム」から予約しましょう。

⒉担当スタッフに、メールや電話でこのプログラムに参加したい旨をお伝えください。

⒊ご希望の日時で地域を案内できるよう、予定を調整します。

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※加賀市内には旅館等もたくさんあるため、そちらにお泊りいただきながら、このプログラムに参加することもできます。